サーモン養殖とは

サクラマス養殖を目指す理由は

他地域では、現在の国内サーモン養殖の主流となっているギンザケ、トラウトサーモン(海産ニジマス)による試験事業を行っているのに対して、大企業の生産系列からの独立運営を目指し、独自性による将来の競争力担保のため、現状では技術的に解決すべき課題が多く、海面事業化例の少ないサクラマスを敢えて研究対象に据えてその養殖技術の開発を行います。

  • 国内サーモン養殖の中心であるギンザケ養殖は大手企業による系列化が進んでおり、系列外の事業者が種苗を入手するためには高価かつ契約制限の多い輸入卵に依存せざるをえない。輸入卵については防疫上の観点から水産庁は厳格な管理を求めている。
  • ギンザケよりも身質が優秀で取引価格が高いトラウトサーモン(海産ニジマス)については、後発の事業者が注目しているが、ギンザケに比べて海水適応性が低いため、海水馴致時のへい死リスクが事業性に影響している。
  • ニジマスは内水面養殖魚として古くから事業化されているため、内水面事業者の多くは利益性が薄い海面用種苗生産に否定的な意見が根強く、今後の生産規模拡大に向けては種苗の確保(海面事業者自身による種苗生産)が課題となる。現在供給不足を支えている輸入卵についてはギンザケと同様の問題を抱えている。
  • ギンザケやニジマスは外来魚であり、世界各国が遺伝子資源の保護(国外流失阻止)に動きつつある現状では、安定的な養殖産業維持に必要な新たな遺伝子資源の獲得は難しく、遠からず高額な輸入種苗(外国の知的財産権)に依存せざるを得なくなる事態が危惧されている。
  • 一方、サクラマスは日本の在来種であり、東北地区は北海道と並ぶ自生地域であることから、育種(優良系統作出)の基盤となる遺伝子資源が多く、天然での主力魚種であるシロザケをはるかにしのぐ高級魚として扱われている。現在、世界を席捲しているノルウェーサーモンはノルウェー国がかつて国の命運をかけて挑戦した育種研究の上に成り立っている。
  • サクラマスは、平成26年に岩手県が「サクラマス資源造成に向けた取組み方針」を策定したほか、「いわて県民計画(2019~2028)」ではサクラマス放流数を令和4年までに117万尾とする目標値を設定が策定されるなど、岩手県では春に水揚げされる重要な魚種として位置づけられ、県内水産関係者は水揚増大を期待しており、更に、地域性のある高級食材として地域流通加工業者からも期待され、他の魚種と比べて地域経済への効果が非常に高い事業となる。
  • 海洋環境の変化などにより、シロサケなどの重要魚種が近年不安定な漁獲量となっており、天然資源にだけ依存することは漁協や漁家にとって厳しい収益となることから、安定的・計画的に生産が見込まれるサクラマス養殖事業を付加することで、持続可能な安定した漁協及び漁家経営が維持できることとが見込まれる。
  • さらに、過去にもギンザケの代替え魚種として海面養殖試験にも取り組まれ、以前、平田地先でも実施され第33回全国漁村青壮年婦人活動実績発表大会で県代表となるなど期待が高かったたが、成長、夏越等の課題によりなにより当時刺身需要が未成熟であったことから実用化には至らなかった。今回の試験はこれらの課題に対応する技術開発を行うものであり、特定の漁協等の事業化を前提としたものではない。また、技術開発後には、希望する県内の漁協等へ技術移転することにより、県内生産の増大に資することが期待される。